父亡き後、母に優しくできない娘の葛藤とは?
2020.10.3
目次
父亡き後、母に優しくできない娘の葛藤とは?
母娘関係改善カウンセラーの横山真香です。
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父に当たってばかりいた母
9月のお彼岸も過ぎました。コロナの状況にあっても、お墓参りを欠かさず行う家庭もあるでしょう。
今回のブログは、昨年、父親を亡くした一人娘さんのご相談を取り上げたいと思います。
東北在住の峰子さん(仮名・30代会社員)は、実家が車で40分程の距離にあり、月1回ぐらいは顔を出していました。
峰子さんは以前から両親の関係に気を遣うことがありました。というのは、子供の頃から、母親が父親に当たることがあり、夫婦仲を取り持つ役目をしていたのです。
母親は、「お父さんが独身時代の交際相手と結婚後も付き合っている」と言っては、父親を責め、峰子さんを味方にしようとするのでした。他にも、姑、小姑からいじめられた。父親の親族は、自分の実家よりレベルが低いなど様々なことを並べ立ててはバカにするのでした。
父親はそんな母親に対し、時には怒ることもありましたが、普段は大人しい性格で責められてもやり過ごすような人でした。
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子供の頃から、父親をけなす母親に同調していた
峰子さんは、子供の頃から父親の悪口を聞かされていたので、それが真実と思い込んでいました。父親は一人娘の峰子さんを可愛がろうとしたのですが、寄り付こうとはせず、母親の方にばかりいっていました。
実は、そうせざるを得なかった事情もあります。というのは、父親の方に行こうものなら母親の機嫌が悪くなるからです。そのような環境で育ったため、思春期の頃には父親と全く話さなくなっていました。
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父親を束縛する母親
峰子さんが、母親にも不信の念をもつようになったのは、20代になってからだと言います。当時、親元を離れ仕事で忙しくしていたのですが、たまに実家に帰ると、母親が父親に罵声を浴びせているのに何度か遭遇したのです。
母親は父親の生活態度に事細かに指示を出し、言いつけを守らないと怒鳴りつけるのでした。また、父が趣味の釣りに行くときも、「女と行くのだろう」と非難したり、釣り道具を壊したりして嫌がらせをするのでした。
耐えているような父親に、峰子さんは軽蔑と同情の気持ちが相反するようになっていましたが、母親についてもなぜ、それだけ父親に執着するのか理解できなくなっていました。
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父の死に罪悪感と後悔
父親は定年退職後、家にこもるようになりました。外に出ようとすると、母があれこれ言っては嫌がらせをするので、それに対抗してまで出かける元気がなくなってしまったのかもしれません。
自室にこもる父親を、峰子さんは心配するようになりました。表情が乏しく、うつっぽくなっているのでは、心療内科など病院に行くことも検討すべきではと母親に言うのですが、そんなことは全く意に介さず、相変わらず文句ばかり言っているのでした。
父親の異変に気付いたのはお正月に帰省したときのこと。食卓に並べられたおせち料理にもほとんど手をつけずにいる父親が痩せたように見えました。峰子さんは、さすがにこれはおかしいと感じ、母親の反対を押し切って、病院に連れて行きました。すると、癌であることがわかり、しかももう手遅れということでした。
それから間もなく、父親はなくなりました。もっと気をつけてあげれば良かった。峰子さんは後悔の念に苛まれるようになりました。ある日、父親の遺品を整理していたときのこと。
古ぼけたアルバムに、赤ちゃんだった峰子さんを抱く父親の写真が見つかりました。それが台紙から一部剥がれており、裏に父親が書いた文字が見えたのです。そこには、「人生で一番の喜び」と書かれてありました。
その瞬間、峰子さんは思い出したのです。ある日の夕暮れ、お散歩に出かけた峰子さんの手を父親の大きな手が握ってくれたこと。その大きさ、ぬくもり、安心感に満たされた気持ち。長いこと忘れていた感覚でした。
「お父さんは私を本当に大事に思ってくれていたのだ」。峰子さんの頬を熱い涙がつたっていきました。
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態度を変えた母親に憎しみが
告別式では、親戚の前で大泣きした母親。あれだけ父親の悪口を言っていたのに、コロッと変わった母親の態度に、峰子さんはただただ驚くばかりでした。
さらにショックだったのは、あれだけ父親の悪口を言っていたくせに、今では母親の中ですっかり良い夫、良い父親になっていることでした。
「あんなに優しい人はいなかった」「どうして私を置いて逝ってしまったのかしら」。母親は事あるごとに父親の思い出話をして、それが美化されているのでした。
峰子さんは、過去に母親の愚痴を聞いてあげて、慰めることが多々ありました。一方で父親を強く責めたりして、それが今、罪悪感となって重くのしかかってくるのでした。
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父親を軽蔑するように仕向けた母親
先日も遺品整理や相続手続きなどで用事があり、実家に帰ったときのこと。お茶を飲みながら、例のごとく母親が父親の思い出話を始めたとき、峰子さんの心の中でカチッとスイッチが入ったのです。
「いい思い出しか話さないくせに! どうしてお父さんが生きていた頃にもっと優しくしてあげなかったのよ。私に、悪い夫、悪い父親というイメージを植え付けておいて、どれだけ私がお父さんに申し訳なく思っているか、わかっているの?」
それは峰子さんの心に澱のようにたまっていたものが一気に噴き出した瞬間でした。悔やんでも悔やみきれないこの思いは、目の前にいる母親のせいなのだ。そう考えると、いてもたってもいられなくなり、実家を飛び出していました。あれから、何度も母親からは電話やメールが届きます。着信拒否まではしないけれど、峰子さんは母親の声を聞く気にはなれません。
一度、自宅のチャイムが鳴り、見ると母親でした。でも、居留守を使い、玄関には出ませんでした。とにかく母親の顔を見たくない、声を聞きたくない。接点を作りたくなかったのです。
「このまま母親とは距離を取りたい。でもまだ相続のことがあるし、一人になった母親に冷たくするのもどうかと思い始めて…」。こうした考えが頭の中をグルグル回り、結論が出ないまま苦しくなった峰子さんは、私にZOOMカウンセリングを申し込まれたのでした。
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自分の感覚を大事にする
峰子さんの状態は、父親を亡くしたことによる喪失と悲嘆、後悔、それに母親への怒り、憎しみといった感情が入り混じり、混沌としています。考えても堂々巡りで結論が出ないのは、整理ができていないからです。
この状況下にある峰子さんのマインド(心の姿勢)は、自分の感情もコントロールできないことに苛立っており、その原因を母親にすることで、何とかバランスを取りたいと無意識に思っているのです。
ただ時間的に見ても、父親が亡くなってまだ1年あまりということで、受け容れるには無理かもしれません。人によって異なりますが、峰子さんの場合は後悔の念が強く、自分の罪を軽くするために、父の死を受け容れようとしているのではないか。それはできないといった複雑な思いも絡んでいます。
今は、母親と会うことで、より強く父親のことが思い出され、罪悪感、後悔の念が呼び起こされるため、刺激が強いのです。
相続手続きの件もほぼ片付いているため、今後何か必要な場合は担当の司法書士さんに事情を説明し、顔を合わさないでも手続きが可能なようにお願いすることもできます。
実家の片付けについては、母親もまだ元気なので任せればいいと割り切ることも大事です。
今、一番必要なのは、峰子さん自身の心を整理することです。とくに、罪悪感から母親を責めたい気持ちを理解し、自分なりに父親の死と向かい合うことです。
私のカウンセリングメニューの一つである「実践マインド・プログラム」は、自分の性格傾向を把握し、現実と向き合うため必要なマインドを確立させることを目的としています。
たとえば、峰子さんの場合は、罪悪感、後悔は、今となってはどうしようもできないものですが、マインド(=心の姿勢)を心に落とし込んでいくことで、父親の死に対する捉え方が変わってきます。
峰子さんは、現在月1回、父親のお墓参りをして気持ちの整理をじょじょに進めておられます。
このブログを読んで、同じようなケースで悩んでおられるのでしたら、一度、私の「実践マインド・プログラム」をご覧になって見て下さい。
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