高齢実母の過干渉、同居を後悔する娘
2022.6.14 (2022.7.11更新)
目次
高齢実母の過干渉、同居を後悔する娘
母娘関係改善カウンセラーの横山真香です。
・高齢実母との同居で募るストレス
一人暮らしの母親が高齢となり、心配事が増えた。そこで思い切って同居を決めたという人もいるでしょう。
それは一大決心だったと思います。娘の側が独身にしても、家族がいるにしても、今までの生活スタイルは変わります。
独身で母親と別々に暮らしている場合は、好きな物を食べ、好きな時間にお風呂に入る。朝何時に起きようが、夜何時に眠ろうが、勝手に決めることができた。しかし、共同生活となると、そういうわけにはいかなくなります。
たとえば台所が二つあって、食事の支度も別々にしているというのならともかく、火の心配などを考えると、なるべく高齢母を台所には立たせたくないと思うでしょう。
娘家族と実母との同居が始まった場合。食事作りも、高齢者向けにと考えると、若い子供達の方は物足りなく感じます。「焼肉が減ったよね。もっと肉を食べたい」「夜はピザにしようよ」と言われたら、別の献立を用意する必要があります。
娘がこれだけ実母に気を遣っても、不機嫌になったりすることもあるでしょう。そうなると、家の中の雰囲気が気まずくなります。
実母の不満そうな表情を娘がつねに気にしていると、必ず夫や子供達に伝わります。
「お母さん、おばあちゃんと暮らすようになって、イライラが増えたね」、「ちっとも笑わなくなったね」と家族から言われ、気持ちがざわつくのです。
「母と一緒の暮らしが始まってから、息がつまりそうです」と話すクライアントさんはとても多いです。
・高齢母の干渉がエスカレート
実母はもともと過干渉で、それが嫌で早く結婚し家を出たのに、結局は実母と暮らすことになってしまった。それでも、長年、離れて暮らしてきたので、親孝行らしいことができなかった。人生の最後は、ゆっくり日々を送ってほしいという思いから、同居を決心したのだけど、やはり過干渉は変わっていなかった。
娘の中ではこうした思いが膨らんできます。夕食の支度ができて実母を呼ぶと、食卓に並んだ惣菜を見て、「お肉ばっかりで、私の頂くのがないわ」と言ったり、どこかに出かけるというと、頭の上からつま先までじろじろ眺めて、「そんな恰好で出かけるの?」と非難される。
「独身のときもああだ、こうだ言われ、本当に嫌だった」と過去の事を思い出し、気分はよけいに重くなります。「いい加減に干渉するのはやめてよ。私、子供じゃないのよ」と言い返すことができたらどんなに気持ちがスッキリするか。でも、なかなか言えないのです。
「自分は結婚して子供もいるのに、いまだに実母から干渉される」。悔しい、怒りが募る一方、言い返すことができない自分が情けない。毎回、その繰り返しです。
・同居を後悔する気持ちが強くなる
実母とのいざこざが繰り返されると、娘の心の内には、後悔が頭をもたげるようになります。
「やっぱり、同居なんかするんじゃなかった。母親はちっとも変っていない。また、私が我慢しなければいけないんだ」
一方で、自分の家族にも気を遣います。「おばあちゃんがいちいち指図してうるさい」という子供をなだめるのも疲れます。
夫が週末、ソファでダラダラしていると、「父親があんなだから、子供達も勉強しないでゲームばかりしているんだよ。あんたがもっと強く言わなきゃ」と実母が別室で説教してくる。
夫や子供達へのふるまいを注意される一方、実母の言動を気にしながら、家の雰囲気を悪くしないようにつとめる。
こうなると、つねに緊張し、家にいるのが嫌になってくるのです。独身時代も、母親の顔を見るのが嫌で、仕事帰りに用もないのにショッピングやカフェに入って時間を潰してから帰っていたことを思い出す。
掃除していても、料理していても、頭の中では後悔の言葉がぐるぐる回っているのです。
「一緒に暮らすなんて決めなければよかった。どうしてあの時、無理と思わなかったのだろう」
また別居すればいいのでは、ということにはならないのです。話はそう簡単にはいきません。実母は家を引き払っていますし、同居を決めたときに部屋のリフォームもしています。実母からリフォーム代としてまとまった金額をもらっているのであれば、なおさら、「出ていって欲しい」とは言えないのです。
もちろん、お金のやり取りがなくても、一度同居を始めたら、なかなか別居を切り出すことは難しいでしょう。
実母との同居にふみきったものの、想像していた以上に厳しい現実が待っていた。そんな状況に直面し、私のカウンセリングを受けられる方はとても増えています。
「結局、親が死ぬまで、我慢し続けなければならないのです」とクライアントさんの多くが悲観的になっています。
・兄弟姉妹に相談できるのか
「何とかしたい」とせっぱ詰まった気持ちになって、兄弟姉妹に相談を持ちかけてみるものの、実母が支払った同居費用がネックになることも。
「言い始めたのはお前だろう。『おふくろと一緒に暮らしたい』って。だから、そのための費用も出してもらっているじゃないか。それで、今さら同居は無理、なんてわがままだろう」
「私達は、みんなでお金を出し合って施設に入ってもらうのもありと思っていたのよ。でも、お姉さんがどうしてもお母さんを世話したいと言ったから、と引き下がったのよ。お母さんから今も、生活費をもらっているんでしょう」
こうまで言われてしまうと、兄弟姉妹に頼るわけにもいかなくなります。結局、自分で決めたことは自分で責任を持たなければならない。孤立無援の状態で、自分を追い込んでしまうのです。
・今さら別居するのは無理?
「親が死ぬまで、この苦しみは続くのでしょうね。母は長生きしそうなので、いつまでこの状況に耐えきれるのか。私の方が先に逝ってしまうかも」。こんな冗談にもならないようなことを言うクライアントさんの表情を見ると、相当ストレスを抱えているのがわかります。
こういう時は、自分の中にリミットを設けてみることです。リミットというのは、時間です。親が不在になったとしたらどのように感じられるか、想像してみるのです。それは、早く亡くなって欲しいと念じることではなく、たんにいなくなったら、と考えてみるのです。
または、長期の旅行、兄弟姉妹のところに数日間でも滞在してもらう、母の実家がある地方にしばらく里帰りしてもらう。実家に母親の兄弟姉妹がいなくても短期間ホテルなどに滞在し、学生時代の友人と会うこともできます。
あるいは、こちらが一泊だけでもホテルなどに滞在して、リフレッシュするといった手段もあります。経済的な問題もありますが、子供もすでに大きくなっているなら、自分へのご褒美に機会を作るのもいいでしょう。さらに状況が許せば、月1回でも、定期的に実行するのがいいのです。というのは、その日を目標に、日々を送ることができるからです。
また、新しく仕事に就いて外にいる時間を増やすことも検討してみてはいかがでしょう。あるいは図書館やカフェ、フィットネスなどで、時間を過ごす。ボランティア活動を始めるのもいいかもしれません。実母と顔を合わす機会を少なくして、自分の時間を作るのです。
実母が遠方から越してきたのなら、地元のコミュニティセンターで開催している趣味の教室やサークルに入ってもらうのもありでしょう。同年代の人との交流は、高齢者にはとくに刺激もあり、精神面でプラスになることもあります。実母にも新しいコミュニティを作ってもらうことが大事です。
・同居ルールを設定しておく
「実母を独りぼっちにすると可哀そう」といった言葉が聞かれますが、母親はお客様ではありません。娘が特別にサービスを提供する必要はないのです。
また、母親の老いの精神的な面を引き受けることも限界があると心得ておきましょう。自宅は高齢者施設ではなく、あなたはプロの介護者でもカウンセラーでもなく、同居という形で暮らしているのです。
このように書くと、冷たいと受けとめられるかもしれませんが、私自身、祖父母、親と長年にわたり暮らしてきて思うのは、親の方も精神的な自立が必要だということです。できることは自分ですべきですし、こちらは必要以上に手を出すことはしない方がよい。
人間は頼ることができると、それに甘えます。自分で何としなければという気持ちがなくなり、「どうせ、娘に頼めるのだから」といった依存が強くなります。
自分の中での同居ルール、「ここまではするけど、それ以上は手は出さない」と決めておいたら、気持ちが軽くなるはずです。
これからできそうなことを小さな事からでよいので、始めてみてくださいね。
それでも、気持ちがおさまらない。もっと具体的な対処策を知りたいという方は、私のカウ
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テーマ: 罪悪感
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