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「虐待した言い訳で娘に許してもらえる」はかえって逆効果?
母娘関係改善カウンセラー横山真香です。
・幼かったわが子をたたいてしまった記憶
私のカウンセリングを受けられるクライアントさんの中で、過去、虐待した理由を娘に話したい。そうすればきっと許してもらえるはず、と話す方はとても多いです。
クライアントさんが挙げる理由として共通しているのは孤独な子育だったということ。手伝ってくれない夫、育児を批判する実母や姑、ワンオペで助けてくれる人がいなかったというのです。
夫は仕事ばかりで、休日は「疲れているんだ」と子供に関わってくれない。実母や姑も、「あなたの育児はダメ」、「そんなことじゃ、いい子に育たない」と非難するばかりで、手伝ってくれない。
夫は出費にもうるさく、「無駄遣いしやがって」とか「また、生活費が足りない? 湯水のように使うんだな」と皮肉を言って、やり繰りにも苦労した。
毎日イライラが募り、赤ん坊だった娘がぐずり始めると、怒りが爆発した。家には止める人もいない。泣き叫ぶわが子に、暴言を吐く。
少し大きくなってイヤイヤをされると、自分自身が否定されたようで、頭にくる。暴言がエスカレートして、物を壁に投げる。音にびっくりして泣き始めた娘をたたいてしまう。
「育児は、私にとって地獄でした」と話すクライアントさんは、決して少なくないのです。
・怒りをコントロールできなかった
休日、目の前で娘が泣いているのに、「お前が見ろよ」と突き放す夫。実母は、「この子、なんでまだハイハイしないのかしら? 大丈夫かしら?」と不安をあおるようなことを言ってくる。
「うちの子ができないことは全部、私の責任なの?」。夫や義父母、実母に何か言われると自分を責めていた。そして、娘が何かするたび、誰かに何かを言われると思い、わが子を叱った。
「あんたのせいで、ママが怒られるのよ」。「お前が泣くから、パパがママに冷たくするじゃない!」
娘の前でカッとなる事が多くなる一方、夫婦の関係が冷えていくのも、娘のせいだと思うようになっていった。
・母親を避ける娘
娘が中学生になったある時、きつい口調で叱ったら、「いい加減にして!」と怒鳴り返された。「お母さんのイライラを私にぶつけないで!」。そこから、娘の態度がどんどん変わっていった。会話をしない、用事があればメモかメール。
母親とは完全に距離を取っている。今の状況ではいけないと、「少し話したいのだけど」と話しかけても無視される。
「あなたが私のことを怒っているのはわかる。私を避けようとするのもわかる。あんなにひどい事をしてしまったのだから。でも、それには訳があるの。理由を聞いて欲しいの」。
そう言ったとしても、娘に無視されるか、あるいはようやくテーブルの席に着いてくれたとしてもスマホをいじるばかりで、返事もしてくれない。
そんな様子を見ると、心から謝ろうと思っていた気持ちが、急速に冷えていく。
「なんで、そんな態度を取るのよ。私がどんな思いで、あなたを育てたと思っているのよ。誰も助けてくれない、それどころか非難されて、それでも必死に子育てしてきたのだから」。
こうした思いが出そうになり、抑えることで何も言えなくなってしまう。
「話がないなら、いちいち呼ぶなよ。ウザイ」と吐き出すように言って、乱暴に席を立つ娘。
「ああ、また話をする機会を失ってしまった」と思っても後の祭りで、そこからは自己否定、自分を責める、の繰り返し。
「感情のあまり、子供を叩いて、大声で怒鳴って。あんなことをしなければよかった」。子供にしてしまった事を思い出し、胸が苦しくなる。
私のカウンセリングを受けられるクライアントさんの多くが言われるのは、「娘から避けられているのは、私のせいです。でもそれには、夫や実母の無理解といった理由があったから。どうにかして、それを娘に伝えたい」ということです。
当時の状況を娘に伝えれば、きっとわかってもらえる。どんなに母親が大変だったか。あんなひどい事をしたのも、お父さんやおばあちゃんが悪いんだ、と理解してくれる。
そこには、どうかして娘に許してもらいたいといった母親の必死な気持ちがあります。
・「言い訳は聞かない」と言う娘
「当時の状況を伝えたら、娘はわかってくれるでしょうか。私を許してくれるでしょうか」
こうした質問を母親クライアントさんから多く受けます。しかし、実際には、現在、どのような関係であるかといったことで、異なります。ケースバイケースなのです。
現在、娘との会話はある。たまに、娘からチクリと言われる。「お母さんは、本当に厳しかったよね。叩かれたこともあったし」という関係ならば、娘には当時の状況を聞こうとする心の余裕があるかもしれません。
もちろん、そこで、母親の気持ちを理解してくれるかどうかはわかりません。さらに、許す、といった心境に至るかどうかも。
ただ、話を聞いてくれる可能性は高いです。
一方、現在、会話もほぼなく、娘が母親を避けている。そもそも、娘がテーブルに座ったとしても、最初から聞く耳持たずといった雰囲気を醸し出している場合。
母親が話したとしても、「そんな言い訳、聞きたくない」と言われてしまうかもしれません。
「言い訳を話して、自分の罪悪感を軽くしたいんでしょう」といったきついひと言を浴びせられることだってあります。
このような娘の受け止め方だと、余計に関係が悪化する場合もあります。
では、いったいどうしたらいいのでしょうか?
・他の人からの話だと、受け容れやすい?
自分のことをたたいた母親、その本人から理由を言われても、娘には言い訳としか捉えられないかもしれません。しかし、他の人が話したら…。
たとえば、母親の姉妹であるおば、母親と仲良くしている友達など。そんな人が「〇〇ちゃんのお母さんはね、あなたを育てていたとき、本当に大変だったのよ」と当時の話を具体的にしてくれることで、娘は冷静に聞くことができる可能性があります。
または、父親、祖母が、「あなたが子供だった頃、お母さんを追い詰めてしまってね」と正直に話してくれたら、娘としては「そんな事情があったんだ」と背景にあったものを少しは理解しようという気になるかもしれません。
けれども、これもタイミングが必要です。母親がおばや友人に話してくれるように頼むことがこの時点でグッドタイミングなのか。果たして、母親が望むような話の内容でもっていってくれるかどうかといった不安もあります。
タイミング、と書きましたが、一番大事なのは、人の気持ちを変えよう、何とか早いうちに関係性を変えようというのは無理があることを認識しておくべきです。
子供をたたいてしまったことを許してもらいたい自分と、母親を許せない娘の気持ちはそれぞれ異なります。それを一緒に紐づけて考えることに無理があるのです。
あくまで、私は私、娘は娘、としてこの問題を捉えた方がいいでしょう。まずは、娘に許してもらうことに焦点を当てるのではなく、叩いてしまった記憶が苦しいご自分の気持ちを見つめ直してみませんか。
私のカウンセリングでは、ご自分を責めることに意識を向けるのではなく、過去の記憶に苦しむのでもなく、今、この時点でご自分のマインドをどこに着地させるかといったことをゴールにして展開していきます。
毎日が苦しくて、早くこの重荷から解放されたいと願っておられるのであれば、ぜひ、私のカウンセリングをご検討下さい。
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