励ましは娘にプレッシャーだった?
気づかなかった母親
母娘関係改善カウンセラーの横山真香です。
子供を励ますフレーズ、「やればできるよ」とか、「あなたならきっと大丈夫」といった声がけが習慣になっていませんか。
その言葉を、子供はどのように感じているのでしょう。
目次
・母親の口癖は励ます言葉
「あなたはできる!」が母親の口ぐせだったという娘。幼い頃からそれだけを聞いて、「がんばらなければ」と思ってきたと言う。本当は、「できない、私には無理」と言いたかった。でも、それを言えば、母親はがっかりするだろう。
そうやって成長した娘が、ある時、母親に言う。「お母さんの口癖、『あなたはできる』は、正直、私にはしんどかった」と。それを聞いた母親はびっくりする。娘がそんな風に感じていたとは、これっぽっちも思っていなかったからだ。
むしろ、その言葉が、娘の成長に役立っていると思い込んでいた。努力することの貴さを教えているつもりだった。でも、それが娘を追い詰めていたなんて。
・幼児の頃から、レッスン通い
「幼稚園の頃から、お稽古事をやっていて、小学校に入ると、もっと増えました。友達と遊ぶ時間なんてほとんどなかった」と話すA子さん。バレエ、ピアノ、英語、体操教室。家に帰れば疲れてしまい、リビングのソファで寝てしまうような日々だった。
レッスン場への送迎は母親。車の中で、おやつを頂く。夜までかかるような場合は、おにぎりが用意されている。
いつも「急いで!」「間に合わないわよ!」と急かされていたような気がする。さらに塾通いが加わった。つねに疲労感があって、子供なのに、ため息をつくことが多くなっていった。
それでも、母親には「もう無理」とは言えなかった。
レッスンの結果が出る。たとえば、ピアノの発表会で、最優秀選考に選ばれるとか。
「がんばればできるじゃない! やっぱり、あなたはすごいのよ」。めったに笑わない母親の嬉しそうな笑顔がご褒美のようで、もっとがんばらなければ、と思っていた。
・一つクリアすると次の目標が待っている
一つクリアすると、次の目標が用意されている。今度は中学受験だった。A子さんには、受験しないという選択肢はなかった。
中学生になって、ある時手にした小説の中に次のような場面があった。
主人公がひたすら働かされる場面があって、「俺は馬車馬か」と叫ぶ。
主人公に自分を重ねたとき、A子さんもつぶやいていた。
「私も馬車馬」
何かが音を立てて、壊れていくのを実感した。
「このままじゃ、私、おかしくなる」。
高校生になってから、休みことが多くなった。朝、起きられない。身体がいうことをきかない。集中力が持続できず、授業についていけない。
その頃、稽古事はピアノだけになっていた。けれども、ピアノの前に座るのも苦痛になっていた。
A子さんの様子が変わっていくのに、最初、母親はそれを認めることができなかった。
「娘はちょっと疲れているだけ。しばらくしたら、また前のように元気になるはず」、と思い込んでいた。
・母親をがっかりさせたくない、という娘
母親はおまじないのように、また同じフレーズを繰り返そうとしていた。「大丈夫、しばらく休んだら、元のようになれるから」。「あなたなら、きっと、できるわよ」
その時、「いい加減にしたら、お母さん。お姉ちゃん、もう限界だよ」。思いがけない言葉で味方してくれたのが2歳下の妹だった。
娘が母親の励ましにひたすら、言うことを聞いているのを、黙って見ていた妹。嫌なことは嫌とはっきり言えるタイプで、母親も、言うことをきかない次女のことは放任。
「お姉ちゃん、無理しなくていいんだよ。お母さんに言いなよ」。姉を気遣ってくれる妹に対して、A子さんはそれでも母親には言えなかった。
「母をがっかりさせたくなかった。これまでずっと、私のために自分の時間を犠牲にしてきたのに」。
けれども、身体の方は悲鳴を上げていた。妹の方が、姉の異変に気付いたのだった。
「お姉ちゃん、おかしい」と。
・言ってくれれば、と責めないように
A子さんが初めて私のカウンセリングルームに来られたのは、この頃だった。その後、大学に進学、社会人になった今も、連絡をしてきてくれる。
今は、母親とは離れ実家を出て一人暮らしをしている。
「あの頃、なんで母親に言えなかったんだろうと、今なら思えます。『もう励ましの言葉はいらない』、『私は無理』って、なんで言えなかったのだろうって」
当時、別々にカウンセリングを受けられたA子さんの母親も同じようなことを言っていた。
「『嫌だ、辞めたい』って、娘がひと言、言ってくれれば、私だって、すぐに辞めさせたのに」
親の多くは、そう思うのです。たったひと言、「嫌」と、なぜ、子供は言えないのだろう、と。
でもそこが、子供の心理として、なかなか言いづらいものなのです。子供は、親が考える以上に親のことを思いやってしまうのです。
これを言ったら、お母さんは、悲しむ、がっかりさせる、怒られる。母親の一瞬の表情を子供が読み取り、口をつぐんでしまうのです。
このような状況になって、子供が本当は我慢していたことがわかったとき、言うべきでないのは「なぜ、言ってくれなかったの」、「どうして?言ってくれればよかったのに」という責めるような言葉です。
そうではなくて、「お母さん、いつもあなたを励ますばっかりだったね」と、事実を認めることが大事です。そのひと言で、「あ、お母さんは、私の気持ちを理解している」と娘が思えるきっかけになるからです。
今、子供に対して、励ましの言葉が口グセになっているならば、親子の関わり方を見直してみませんか。
娘がすでに大人になっているけれど、過去に同じようなケースがある、という方は、母娘の関係に問題がなければ、あえて言う必要はないのかもしれません。
けれども、娘から距離を取られていると、明らかに感じている方は、こうした過去が絡んでいる可能性があります。
ここで、過去と向き合ってみませんか。今さら、もう遅いと後悔ばかりの日々を過ごすのはやめて、もう一度、娘さんとの関係性をやり直してみようと思いませんか。
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今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
母娘関係改善カウンセラー横山真香