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先日、モラルハラスメントに関する講演会がありました。
講演を聞いていて感じたのは、ケースで取り上げられていた夫から妻へのハラスメントが、母親から娘への、または娘から母親へのそれと似ているという点です。
フランスの精神科医マリー=フランス イルゴイエンヌは著書の中でモラルハラスメントとは「言葉や態度によって巧妙に人を傷つける精神的な暴力」「相手の人格を否定・侵害し続けることで、自尊心や自信を喪失させ、操るという不法行為」と著わしています。
この「巧妙に」「操る」という表現は、母娘の関係にもあてはまります。
このブログで私が書くテーマは、母親が娘を巧妙に、操るといったものではなく、反対の関係性です。つまり、娘が母親を巧妙に、操るというものです。
実際にそんな事があるのだろうか、と読者の中には首をかしげる人もいるかもしれません。
けれども、私のカウンセリングルームには、実際そのようなケースで苦しんでいる母親のクライアントが大勢、来られているのです。
そのようなクライアントの家庭では、娘が女王様のように君臨し、母親が下女のようになって世話をしている状況があります。
たとえば、娘が望むものを母親に買いに行かせる。もしそれが気にいらなければ再び、買いに行かせる。それが店になければ、見つかるまで他の店に探しに行かせる。
土砂降りの雨だろうが、強風の中だろうが、深夜だろうが、とにかく自分の目的を果たすまでは母親の帰宅を許さない。さらに帰れば帰ったで、「遅い、何していたんだ」と怒る。
このような状況になっている場合は、母親の方が完全に娘の支配下にあって、言うことを聞くようになっているのです。
しかし、こうした関係性は突如として出現したわけではないのです。
クライアントの方達のお話しを伺うと、前述したような関係性になるまでには、娘からの巧妙な仕掛けがあり、母親を操るまでに至るプロセスがあるのです。
そして、プロセスの中で共通しているのは、母親の痛いところをつき罪悪感を持たせるところです。たとえば、「子供の頃、お母さんからこんな事をされてひどく傷つけられた」とか「お母さんがたびたび、私の事を〇〇と言ったから、自分は何をやっても自信がもてないの」という事を何かの機会をとらえては娘が話す。しかし、それについて話しているときは大きな声で怒鳴ったり、物を投げたりするわけではないのです。あくまで淡淡と話すのです。
そのような状況が続く一方で、力関係を誇示する場合があります。
どのようなケースかというと、娘に急な用事ができた、または気分がのらず、その用事を済ませる事が出来なくてキャンセルしなければならない事態になった。それは予約していた美容院であったり、バイト先であったりしますが、とにかく連絡を入れなければならないという状況です。こういう時に、「ね、お母さんが電話してくれない?」と娘が頼んでくるのです。
「そんな事は自分でしなさい」という母親が大半ですが、中には「しょうがないわねえ」と言いながら娘の代わりに電話をかけ先方に謝る。その役を引き受けてしまうのです。
このような話は一見、どこにでもありそうな事です。「あ、うちも同じような事をしている」と思った方もいるでしょう。
それはほんの小さな事、ささいな事から始まっているのです。
しかし、先方に連絡するというのは案外しんどい事です。なぜなら、急なキャンセルを謝らなくてはならないし、次のフォローも考えなくてはならない。
「それってどのように話したらいいの?」
という事がわからない娘がいるのです
本来なら、自分が電話で話す事で、こういった言い方が先方には一番伝わるかな、とか「自分の事情で、先方がとても不愉快な感じで受け答えしている。次回はキャンセルしないように気をつけよう」と様々な思いをもちます。この経験がとても大切なのです。
しかし、それを母親にしてもらうと、当の本人は謝る事も反省する事もほとんどなく、この事態を切り抜けてしまう、それも母親にしてもらったところはスルーして、自分がやりこなしたように思い込みます。
ここで、一つの事実が出来上がってしまいます。
「面倒な事はお母さんに任せればいいわ」と娘が認識しその後も、何かあるたびに「お母さん、お願い」と言っては母親から先方に謝ってもらったり、言い訳をしてもらう事が増えるようになります。
母親が「そのくらい、自分でやってちょうだい」と言うと、途端に不機嫌になり、ドアをバタンと閉めたり、何か話しかけても無視するといった行動を娘が取るようになります。そうした小さな事の積み重ねが続くうちに、いつしか、母親が娘のご機嫌を伺うようになってしまう、この関係性が出来上がってしまうと完全に娘が母親を支配するようになっているのです。
しかし、通常は両者ともにそうした関係性には気づいていないのです。というのは、何か事が起きない限りは関係がうまくいっているからです。
このようなケースに見られる娘の性格傾向として、自分が感じる嫌な事、プレッシャーになる事は回避する事が挙げられます。しかし、家庭外でも人間関係でもさまざまな場面があります。嫌な事ばかり避けて過ごすのは不可能です。
そして、人間関係につまずくと、そのつらさや苦しみと真正面から向き合うことよりも、母親に何とかしてほしいと思うのです。実際には何とかしてよ、とは言えなくても、イライラした気持ちや漠然とした不安感が大きくなり、それを母親にぶつけるようになります。
友人やバイト先、職場の人などに対する外面がいいというのも、こうした娘にありがちな傾向の一つです。その人達にしたら、この女性が母親を支配しているなどとは夢にも思わないでしょう。
さて、こうした母親と娘の関係が長く続くほど、支配力は強大になっていきます。
もし、この記事を読んで自分と娘との関係にあてはまると思う方は、とにかくその事実を認める事が大事です。そうでないと、「娘なんてこんなものだ、いつも母親に甘えてくるのだから」といったあいまいな態度で今後も接していくと、知らず知らず娘の支配下に身を置くことになってしまいます。
けれども、多くの母親がこの事実を認めたがらないのです。なぜなら、自分の子供から支配されているなんて夢にも思わないし、何か息苦しさのようなものを感じていても、それに蓋をしてしまいがちだからです。
そこで、「うちの娘ったらね」という話をしても冗談のようにしゃべるし、友人もそれを聞いた時点では、「あらあら、甘やかしちゃって」ぐらいにしか受け取りません。さらに深刻な状況になったときは、友人に話す事もできないのです。
この記事を読んでくださっているあなたはの状況はどうでしょう。まだ友人に冗談のように娘との事を話せる段階ですか。
それならそれで、今の時点で気がついた事を認識して下さい。そして、これからは娘から頼まれごとをされても、「あなた自身がすべきでしょう」ときっぱり断ってください。
そこで娘がむくれても、癇癪を起してもそれは娘自身の問題です。自分に起きた事は自分で対応できるような力をつけてもらうべです。
けれども、すでにそれができないような場合は…。
今からでも決して遅くはありません。
娘に対して、「それはあなたがすべきでしょう」「あなたの問題よ」と言える母親になる、そのためのカウンセリングを行っています。
娘に対して、なぜそれが「言えないのか」。
それは、娘との関係性を築いていた母親自身にも理由があるのです。しかし、恐らくその事に気づいていないでしょう。
冒頭のモラルハラスメンについてですが、こうした関係性は非常に巧妙に作り上げられます。母親を操ろうとする娘自身にも、当初はそんな気持ちに全く気づいていないはずです。
しかしながら、いつのまにか蜘蛛の巣のようにはりめぐらされた中に、母親はがんじがらめになっていくのです。
こちらで展開するカウンセリングでは、娘との今までの関係性を変えるところがどこにあるのか、それを見つけるところから始めます。いきなり関係性を変えるといっても、それは無理だと思われるでしょう。ほんの小さなところからでいいのです。そして、大事なのはそれができると、母親であるクライアント自身が思う事。ここがスタート地点になります。
状況を変える事ができます。
そのためには、まずあなた自身が行動を起こす事です。それすらも億劫、無理だと感じても、電話だけならかける事はできるでしょう。
こちらでは無料のお試しカウンセリングサービスがあります。
一度、こちらのご利用を検討してみてください。お電話ならば最初の一歩を始めやすいはずです。