娘をハグできない私は母親失格なの?
「5歳の娘です。しょっちゅう、私に抱きついてきます。そのたびに、嫌悪感が募りこの間、とうとう突き飛ばしてしまったのです」と話す30代のクライアントさん。
「ものすごくイライラしていて…。なんでくっついてくるの? しつこい、もう何とかして!と大声で叫びたい自分がいました」
この方と同じようなご相談をよく受けます。クライアントさんの年齢層は幅広く20代~60代くらいまで。ということは、娘の年齢も幼児~成人までということになります。
冒頭のクライアントさんに限らず、ほとんどの方がハグして欲しいという娘の気持ちを受け容れられずとても苦しんでいます。
「自分は冷たい母親なのではないだろうか」
「私が産んだ子なのに、生理的な嫌悪感があるのはどうして?」
はっきりした理由はわからないままモヤモヤ感は募る一方です。
自分をさらに責めてしまうのは、娘はハグしたくないけれど、別の子供ならOKという場合。とくに多いのは、「息子ならいくらでもハグできるのに」という母親です。
「息子ならこちらからハグしたいぐらいなのに、なんで娘だと嫌なのかしら」
「あ、もしかして息子は弟だから、ちっちゃいから、だからなのね。お姉ちゃんはハグしている場合じゃないよ、手伝って!と思うからかしら」
など、クライアントさんはそれぞれ娘をハグできないことに理由を探そうとします。
ハグは、当然身体と身体が触れ合うので、温かいですよね。身体のぬくもり、体温が相手に安心感を与えるのです。
幼い娘も成人した娘も、ハグしてもらうことで何を求めているのでしょうか。
何を満たそうとしているのでしょうか。
それは前述した安心感です。安心感が欲しいのです。
たとえば、ぬいぐるみの生地は柔らかいですよね。これも抱く事で癒し効果はありますが、なんといっても人間の体温には負けます。温度差ではなく、ぬくもりの力が異なるのです。
ハグして欲しい、この言葉の奥には母親の体温を感じて安心感を得たいのです。
そんな娘の気持ちを受け容れられない自分を、母親として責めてしまうかもしれませんね。
さて、カウンセラーの私がクライアントさんから同じようなご相談を受けて一つ共通していると思っていることがあります。それは、娘さんが「ハグして!」と駆け寄ってきたとき、母親自身が家事、育児、自身の仕事のことなどでいっぱいいっぱいになっている時、「来ないで!」といった拒絶に近い気持ちがあるようです。つまり、心の余裕がないときです。
では、そんな気持ちに余裕がないときでも相手が男の子ならどうする? といった疑問がわいてきます。
母親の多くはこの疑問に対して、「なんとっても弟でまだ小さいから」と答えてくれました。
ハグについては姉、弟のパターンが非常に多いです。
口が達者で少しずつでもいろいろできるようになったお姉ちゃんと、まだ言葉もたどたどしく、動作もおぼつかない弟。どうしても比較してしまいます。
見ていてもあぶなっかしい下の子の仕草、様子に母性本能を刺激されるのか、あるいは、2番目の育児なので、母親の方にも心の余裕があるのか、なぜか上の子にはできないのに下の子にはハグができるのです。
先ほども述べましたが、子供から「ハグして!」と近寄られたとき、母親自身の心の状態によって大きな違いがあります。
穏やかな気持ちでいられるときは、ハグできることもあります。しかしながら、何かが気になり不安が生じているとき、気持ちがむしゃくしゃしているとき、知り合いにとても良いことがあって本当なら喜んであげるべきなのに、なんだかおもしろくない自分がいる。
そんなときに娘が近づいてきても、イライラした気持ちの方が強くなってしまうのです。
このように母親の気持ち、感情の状態によって、ハグができるときとできないときがあります。
つまり、心の余裕があるかないかという事と大きく関係していると思うのです。
もちろん、子供の態度も大きく影響します。さっきまでだだをこね大泣きしていたとしたら、少しでもいいからこの子と離れたいと思うかもしれません。その気持ちが消えないまま、子供の方はすっかりご機嫌になって「ママ、抱っこ」と言ってきたとしても、素直に応じられないでしょう。
娘をハグできなかったと言っても、そのとき、あなた自身何か抱えていたものがあるはずです。自分を責めないでください。その前に、自身がどのような気持ちでいたのか、ふりかえる方がむしろ大事です。
しかし、どのような気持ちでいたのか、それが言い訳となって列挙されるぐらい多いのだったら。
または、どう振り返ってみても別に心の余裕がなかったわけではない。言い訳も見つからず、とにかくこの娘にそばに寄られると嫌悪感が募るのだったら。
このような場合は、自分を責める→今度こそ娘をハグしようと思う。→そばに来られて嫌悪感→再び自分を責める、の堂々巡りになります。
この負の連鎖から抜け出すには、自分の気持ちを言葉にして発してみること。今、何か気にかかっていることがあるのでは? それをまず突き止めようとしてみて下さい。
実は目の前にある問題から逃げているのではありませんか。
問題に対して真正面から向き合おうとしていないのではないでしょうか。
それが娘のこと以外であるならば、または娘自身のことであっても、あなた自身が問題ととらえようとしないでいるならば、それ自体が問題なのです。
もし、ここで何かに向き合おうというお気持ちになりつつあるのならば、私のカウンセリングも気持ちをお言葉にする強力なツールとなり得ます。
一人で抱え込まずに助けを求めて下さい。SOSを出すのはもちろん、家族や友人でもいいのですが、娘をハグできないといった内容は、相手から非難、またはお説教される可能性があります。
そうなると、さらにこの問題に蓋をしてしまいがちです。むしろ、全く知らない第三者の方が話しやすいのです。
冒頭にあげた30代クライアントさんですが、私のカウンセリングを受けて頂きどのように変わられたのでしょうか。後日送って頂いたメールには、次のように書かれてありました。
「娘を突き飛ばしてしまった前日、私は母と電話で話していたのですが、その最中に怒り出し一方的に切られてしまいました。そうなると私はひどく不安になり落ち込むのです。そんなときに娘に近寄ってこられてもハグどころかイライラしてしまうのです。カウンセリングによってこうした背景があるから余裕がないことがよくわかりました。娘をハグできない問題よりも、母について私がどう自分で対処するかということに向き合わなければということがわかったのです」
今まで「娘をハグできない」数多くの母親クライアントさんと接してきました。この問題の深刻さを知る一方で、状況は変えられるという強い信念が私にはあります。
このブログを最後まで読んでくださったあなたご自身、どうか現在の状況をふりかえってみてください。
母娘関係改善カウンセラー横山真香 横浜元町&東京広尾ルーム
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